ただ友にならなくては
ただ友にならなければ
別れの時がせまっている
時空が歪む音がした。
この思いが一線をこえてしまえば、仮初めの幸せの先にある絶望がみえてしまっていることが。
(鮮やかに朽ちていくこの世界で足掻く僕の唯一の活路。)
この手でオロチの首を落としてしまった。それは何を意味しているか痛い程に解っていたのに。俺がもし一言夢をつなぎ止めたいと伝えたなら何か変わっていたのだろうか?いいや、なにも変わらない。そんな甘さは求めてない。この手でまやかしの百合を手折りたかったのだ。
この焼け付くものはなんだろうか。
業火を昇華するように涙が溢れていく。
そんな杞憂をあざ笑うかのように残酷にも逆らえない力に銷化されていった。
(声を枯らして叫んだ)
曹丕、好きだ、大好きだ。
大好きで、大嫌いなんだ。
全てを捨てて時代に抗えたら。
そうできたらどれだけ幸せだろうか。
今すぐその手で俺を殺してくれ。
そう言えたらどれだけ幸せだろうか。
憎悪にまみれた怨念でお前を見れたら、どれだけ幸せなのだろうか。
いい友にならなくては。
いい友にならなければ。
俺は駄目になってしまう。
曹丕、曹丕
大好きだ。
(二人を重ねた偶然)
本来ならば、出会うことなどなかったのに。
出会ってしまってからこんなことを思ってももう遅い。
瞳の奥で火花が飛んだ。
今更この唇から胸から溢れる言葉を紡ごうとしても、もう遅い。
(僕らの心は棘だらけだ)
「これで貴様との縁も切れるな」
「全くだ。清々する」
駄目だ、曹丕。
そんな辛辣な言葉じゃ俺は死ねない。
棘に護られた真紅の花弁を視てしまった。愛を見つけてしまった。同時に赤に眩惑せぬよう、己の棘が首に深く食い込んでいき、偽物のような血液が鎖骨を伝っていった。
(一度だけ一度だけ願いがかなうならば何度でも生まれ変わってあの日の君に会いに行くよ。)
「あるがままに生きろ曹丕」
「ふ、戯れ言を。その様な事、全て知っているだろう」
「あぁ、そうだな」
十分すぎるほど知っているさ。その孤独も悲観も。史ではなくお前が語る覇も。ただ、知っているだけ。知っているだけだ。
(ふたりを繋いでいた絆が綻び解け日常に消えていく。)
また瞳の奥で閃光が走っていく。先程よりも幾分か強く、もう真っ直ぐ曹丕を見ることはできなかった。曹丕は、。
(さよなら愛した人よ、ここまでだ。もう振り向かないで歩き出すんだ)
「殿、それは…」
懐かしい空気と、懐かしい情景に包まれながら、手にある一つの封書へ懐かしい者から問いが降る。確信めいた忠臣の瞳に、僅かな笑みを移し、一つ、手元のそれに口づけを落とす。
(もうおしまいさ)
「もうお終いだ」
綴った化身を切り裂いて空にばらまき風に消されていく。
さよなら。古の王よ。
ただいま。不鮮明な手綱よ。
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タイトル通りルカのこの歌が大好きでやらかしました。もっと真剣に書きたいないつか。最初はそんなに意識してなかったけど、書いてるうちにこれかなりの丕三ソングなんじゃないか…!?