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京佐*Kyosuke
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THANK!
2009/08/10 (Mon)
今年の梅雨明けは遅く、大学はとっくに夏休みにはいっているのに、一世一代の蝉の晴れ舞台や殺人的な太陽光の雨は未だない。
クーラーは嫌いだった。だが、むせかえるような暑さも大嫌いだった。総じて夏自体嫌なのだ。
そんな俺にとって、今夏はえらく過ごしやすいのだ。
(例えどこかで人が死んでいたとしても。)
「曹丕、今日はいつもより涼しい」
虫除けのために貼ってある網戸から入る夜風に髪がわずかに踊る。家主の富と名誉のお陰で都会の一角にも関わらず、偉く広い部屋と偉く佳景な窓の外。俺はこの窓が密かに気に入っていた。暇さえあれば窓際に座っている。勿論今も。
家主といえば暑いか寒いかそんなことどれもさして興味はなさげに贔屓にしている銘柄の煙草とじゃれあっていた。己の言葉にない返答を待つわけではないが、なんとなしにその様を眺めていれば再びふきはいった風に自分の髪は遊ばれ、そのまま曹丕の髪にも絡んでいく。長い前髪がふわりと散った。
曹丕は座っていたソファーから立つ。
そのまま俺の横を過ぎ、空間を遮っていた網戸を綺麗に覗き、ベランダへ出て行く。
俺は後を追った。
外はまるで額縁に飾ってある絵画の中に飛び込んだような、そんな錯覚さえ起こす程現実ばなれした盛観さである。
曹丕は落下防止に作られた際に体を預けお供に連れてきた煙草に着火した。
唇に挟まれ酸素を入れた火種はひとしきり燃え上がり己の命を削る。
じりじり迫ってくる死をみていると、闇夜にうかぶその火種はまるで生命を宿したかのように、光輝く姿が直感的に蛍のようだとおもった。
誰かのエゴで殺されていく。
肺に溜めた紫煙を一気に吐き出す。風上にたつ俺にはかすりもせず闇に紛れていった。曹丕の優しさの一つだ。
そして間もなく
偽形蛍は死んだ。
「寒くないか?」
「まったく」
「…ここは嘘でも寒いというところだ」
何故だ。反論するまえに蛍の死臭が残る腕に包まれる。
突然の行為にさして驚きもなく頭の中ではこの行為と寒いという言葉をイコールで繋げた。こうしてほしいときは寒いといえばいいのか。覚えておこう。
口元が寂しいのか首筋にピリッとした痛みが走り噛みつかれていることを知った。曹丕には僅かだが噛み癖がある。だから誤魔化すように煙草を吸ってるんだ。そんなもので誤魔化すくらいなら厭きるほど俺を噛めばいいのに。曹丕になら皮膚でも指でも持って行かれたっていい。馬鹿。
「…曹丕」
今夜の冷気に乗ってぽつ、ぽつと雨が降り出す。あっという間に群れは加速し、地に叩きつけられ弾け、要は土砂降りというやつだ。
大粒の雨が落ちていく様をベランダで暫く眺めていた。跳ねた雫に少しずつ服に滲みを作り髪は束なっていく。雨は好きだ。曹丕も好きだ。ここを動く理由がなかった。
「抱きしめてほしいときは寒いといえばいいのはわかった。ならばキスしてほしいときはなんと言えばいい?」
「さぁ、な」
答えを教えてくれぬままに合わさる唇は異常なまでに熱く、ふと先程見た闇夜に浮かぶ灯を思い出す。
蛍
風向きと強さを変えた酸性雨にお互いすっかり全身蝕まれてしまった。それでも偽形蛍は消えない。気分が高揚する。このまま、ずっと、このままでいたい。
もし願いが叶うなら迷わず俺はこう唱えるだろう。
「 」
(例えどこかで泣いている人がいてたとしも)
******
三成がツンツンしてないよ。カップリングに絶対外せないのは噛み癖です!どっちにつけようかずーとなやんで、なやんでなやんでとりあえず曹丕につけましたが、多分三成にもつける。似たもの同士だしいいよねーという結論。私は雨が好きです。泣いてるとかしんでるとかは災害とか凶作とかそんなかんじ。
今年の梅雨明けは遅く、大学はとっくに夏休みにはいっているのに、一世一代の蝉の晴れ舞台や殺人的な太陽光の雨は未だない。
クーラーは嫌いだった。だが、むせかえるような暑さも大嫌いだった。総じて夏自体嫌なのだ。
そんな俺にとって、今夏はえらく過ごしやすいのだ。
(例えどこかで人が死んでいたとしても。)
「曹丕、今日はいつもより涼しい」
虫除けのために貼ってある網戸から入る夜風に髪がわずかに踊る。家主の富と名誉のお陰で都会の一角にも関わらず、偉く広い部屋と偉く佳景な窓の外。俺はこの窓が密かに気に入っていた。暇さえあれば窓際に座っている。勿論今も。
家主といえば暑いか寒いかそんなことどれもさして興味はなさげに贔屓にしている銘柄の煙草とじゃれあっていた。己の言葉にない返答を待つわけではないが、なんとなしにその様を眺めていれば再びふきはいった風に自分の髪は遊ばれ、そのまま曹丕の髪にも絡んでいく。長い前髪がふわりと散った。
曹丕は座っていたソファーから立つ。
そのまま俺の横を過ぎ、空間を遮っていた網戸を綺麗に覗き、ベランダへ出て行く。
俺は後を追った。
外はまるで額縁に飾ってある絵画の中に飛び込んだような、そんな錯覚さえ起こす程現実ばなれした盛観さである。
曹丕は落下防止に作られた際に体を預けお供に連れてきた煙草に着火した。
唇に挟まれ酸素を入れた火種はひとしきり燃え上がり己の命を削る。
じりじり迫ってくる死をみていると、闇夜にうかぶその火種はまるで生命を宿したかのように、光輝く姿が直感的に蛍のようだとおもった。
誰かのエゴで殺されていく。
肺に溜めた紫煙を一気に吐き出す。風上にたつ俺にはかすりもせず闇に紛れていった。曹丕の優しさの一つだ。
そして間もなく
偽形蛍は死んだ。
「寒くないか?」
「まったく」
「…ここは嘘でも寒いというところだ」
何故だ。反論するまえに蛍の死臭が残る腕に包まれる。
突然の行為にさして驚きもなく頭の中ではこの行為と寒いという言葉をイコールで繋げた。こうしてほしいときは寒いといえばいいのか。覚えておこう。
口元が寂しいのか首筋にピリッとした痛みが走り噛みつかれていることを知った。曹丕には僅かだが噛み癖がある。だから誤魔化すように煙草を吸ってるんだ。そんなもので誤魔化すくらいなら厭きるほど俺を噛めばいいのに。曹丕になら皮膚でも指でも持って行かれたっていい。馬鹿。
「…曹丕」
今夜の冷気に乗ってぽつ、ぽつと雨が降り出す。あっという間に群れは加速し、地に叩きつけられ弾け、要は土砂降りというやつだ。
大粒の雨が落ちていく様をベランダで暫く眺めていた。跳ねた雫に少しずつ服に滲みを作り髪は束なっていく。雨は好きだ。曹丕も好きだ。ここを動く理由がなかった。
「抱きしめてほしいときは寒いといえばいいのはわかった。ならばキスしてほしいときはなんと言えばいい?」
「さぁ、な」
答えを教えてくれぬままに合わさる唇は異常なまでに熱く、ふと先程見た闇夜に浮かぶ灯を思い出す。
蛍
風向きと強さを変えた酸性雨にお互いすっかり全身蝕まれてしまった。それでも偽形蛍は消えない。気分が高揚する。このまま、ずっと、このままでいたい。
もし願いが叶うなら迷わず俺はこう唱えるだろう。
「 」
(例えどこかで泣いている人がいてたとしも)
******
三成がツンツンしてないよ。カップリングに絶対外せないのは噛み癖です!どっちにつけようかずーとなやんで、なやんでなやんでとりあえず曹丕につけましたが、多分三成にもつける。似たもの同士だしいいよねーという結論。私は雨が好きです。泣いてるとかしんでるとかは災害とか凶作とかそんなかんじ。
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